着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

Français Authentique

 耳からのフランス語学習が合っているという方に特におすすめのサイトがこちら:Accueil • Français Authentique

対象者はフランス語学習者で、フランス語の理解力はある程度あるものの、表現力がなかなか伸びないという人向けです。

 FA(Français Authentique)創設者のJohan氏はYoutube上に、フランス語を耳から学習するための七つの規則をあげています:

www.youtube.com

彼の言っていることの大半が理解できれば、FAが求める理解力にはすでに達していると考えられます。そこでまずは上記のビデオを視聴してみて、自分のレベルに合っているかどうかを確認してみるといいです。また同時に、FAがどういう学習方針をすすめているのかを把握しておきましょう。

 FAの最大の特徴は、生のフランス語、つまり教科書などに見られる不自然なフランス語ではなく、日常のあらゆるシーンで出会ってもおかしくないフランス語を、大量のポッドキャストによって視聴できるという点にあります。

 MP3形式のファイルをダウンロードすれば、いつでもどこでも、空いた時間を有効に活用して生のフランス語を聴くことが出来ます。さらに各音源にはそのトランスクリプション(音声を文字に書き起こしたもの)がpdfファイルとして添付されており、音で拾えない単語や表現をいつでも確認できるようになっています。

 また特集枠も、フランス語特有の表現を、具体的なコンテクスト(その表現が使われる文脈、状況)を交えながら解説したり、視聴者のフランス語に関する質問に答えたり、フランス文化・歴史に触れたりと充実しており、学習に飽きがくるということがありません。内容の充実したフランス語を大量に確保できるというのは、学習者にとって心強いものです。学習自体が楽しくなるということほど、学習の助けになるものはないからです。

フランス語学習者へ

 

 大学初年次において第二外国語としてフランス語を選んだ方や、生涯学習としてフランス語と付き合っている方が対象です。フランス語の学習に際していつもそばに置いておきたい書籍やツールを紹介します。学習の一助となれば幸いです。

 

 電子辞書は購入するべきです。これで単語調べに費やす時間が大幅に減り、節約できた時間をもっとエネルギーを使うべきところに割くことができるようになります。

 僕が使っているのは、EX-wordに外国語としてフランス語が入っているものです。仏和・和仏辞典はもちろん、仏仏辞典(PETIT ROBERT)が参照できるのは便利です。仏仏辞典は、日本語訳を見ても使いどころがどうもよく分からない単語の意味・用例を調べるのに利用できます。

 また仏英・英仏辞典も収録されています。英語で知っている便利な表現をフランス語で何と言えばいいのか分からないときに使えます。その逆も然りです。

 フランス語で書かれた文章を読むときは、当然未知の単語に出会います。それらすべてをいちいち調べているようでは、時間もかかり過ぎますしやる気も続きません。調べる単語に優先度をつけるといいです。たとえば名詞を優先する、などです。意味がある程度予測できる、または、意味はわからないけれども読解には本質的に関わらない部分は、優先順位を下げるなどして、なるべく理解の妨げの根幹となっている単語に焦点を合わることが肝要です。

 

 ラジオ放送は定期的に流されるので、学習リズムを作るのにうってつけです。また、耳からの理解を強くするのにも効果的でしょう。ここではまいにちフランス語をおすすめしたいと思います。中級以上の学習者であっても、木・金曜日の「応用編」は、学習の仕方次第で非常に役に立つツールになります。

 NHKの該当サイトで利用者アカウントを登録すれば、前一週間分の放送のストリーミングを無料で視聴することができます。時間に余裕がないという方は、週末にまとめて聴くという方法もあるかと思います。とくに一回の放送が15分と短くまとまっているので、空いた時間にこまめに視聴しやすいというのも大きな利点です。

 各回には、その回の学習テーマとなる短い会話が収録されています。この会話はネイティヴによってゆっくり丁寧に発音されるので、これをシャドーイングし、さらにディクテーションすると有効です。

 またTuneIn Radio Proというアプリケーションをインストールすると、各国のラジオ放送(もちろんフランス語圏のものも)を視聴できます。また録音もでき、アラームを設定することもできます(朝早い放送を逃さないために使えます)。フランス語学習にとどまらず、たとえばフランス語圏で旬の楽曲・グループを知りたい人は音楽番組の視聴などもおすすめできます。時事問題に興味がある方はニュース番組を視聴することもできます。使い方は人によって千差万別です。

 

 書籍の紹介に移ります。フランス語学習者向けの参考書は、それこそ数限りなくありますが、その中でもとくに個人的に有用だと感じたものを列挙していきます。

  1. 携帯版 フランス語会話とっさのひとこと辞典』 日常で実際に多用される会話表現を、シチュエーションに応じてまとめて収録したもの。
  2. 21世紀フランス語表現辞典』 長年日本人のフランス語教育に携わったフランス人の筆者が、よく使い間違いを起こしやすいフランス語表現を辞典としてまとめたもの。表現の型がもっとも一般的なかたちで挙げられており、その使用例も表現の幅が広く、豊かな語彙力・語い力養成にも使えます。
  3. 新・リュミエール フランス文法参考書』 初学者にもわかるよう丁寧に初歩的文法を解説したもの。各課には問題もついています。
  4. 現代フランス広文典』 進んだ文法の参考書。品詞別に細かい文法項目が解説してあり、用例も豊富で、日本語訳もよく練られています。全体を通して、単語同士の繋がりに重きをおいています。
  5. 時事フランス語』 時事報道に特有の語彙や表現を効率良く学べる参考書。テーマ別に分かれていて、各テーマで扱われる例文は比較的短く、学習しやすい構成になっています。
  6. 現代仏作文のテクニック』 フランス語に訳しにくい日本語にどのように対処するかが、具体的な例文とともに解説してあります。翻訳の訓練を積みたい方に有用かと思われます。
  7. フランス基本熟語集』 ひとまとまりで意味の一単位を成すと思われる表現・成句をまとめた一冊。出現頻度のとくに高いものが掲載されており、例文もついています。また、どのような経緯でそういう意味になったのかに対する解説も親切です。

 

 ここに挙げたものは個人的な判断基準で集めたものばかりです。あくまで参考にとどめていただき、その先は各人の興味・趣向に合った学習方法の確立を目指していただきたいです。

 語学学習はいつでも、単なる語学にとどまることがなく、その文化圏にまで入っていくからこそ面白いものです。自分の価値観が揺るがされる、そんな体験のきっかけをつくってくれる語学学習の醍醐味をお忘れなきよう。

単語ではなく、伝えたい内容にグローバルな対応をつける

 もうすぐ人生初の通訳としての仕事が控えている。通訳をする上で難しいのは、日本語で述べられた内容をフランス語に変換するプロセスだ。この逆の過程は、よほど聴解力が劣らない限り母語の力で精確さを補うことができるから、それほど苦労はしない。

 僕は話すより書くほうが、また聴くより読むほうが得意であって、この点を考慮して翻訳という作業から入ろうとしたのはごく自然な成り行きだった。通訳は音を、翻訳は文字を入出力するが、両者の間に密接な関係があるのは、中級以上の学習者であればおのずと明らかなことだと思う。また通訳は翻訳に比べ、短時間で正確性を追求しなければならないから、訓練による習熟が不可欠な分野だ。

 一見まったく異なるこの二つの技術にも、ある共通点がある。それは訳出の過程が逐語的ではなく、話者の伝えたい「アイデア」というグローバルな対応のなかにあるということだ。細かい点は別として、アイデアの段階ならばどの言語にもある程度の正確さで訳出できるのは、納得のいくことだろう。

 例として日本語→フランス語の場合を考えてみる。日本語を母語とする話者がある発言をしたとする。これを日本人通訳者は瞬時に理解し、音という定形から、アイデア(話者の伝えたいこと)という不定形のものへと変換する。これは日常でわたしたち日本人が繰り返していることである。そしてここからが通訳者の必要とされる領域だ。つまり理解し獲得したアイデアを、再度フランス語という「形」に出力するのである。この部分で訳者のフランス語の能力が問われる。訳者の語彙が十分豊かであって、また訓練のうちにアイデアを音に変換する作業がほとんど反射的速さに近付いたとき、初めて金をもらえる仕事ができる。イデアという中間項の存在をおろそかにせず、望めるだけの正確さで把握すること、これが訳出の第一歩であり、意外と手を抜いてしまう作業なのである(とくに日本語→フランス語の場合)。

 語彙の豊かさはそのまま網の目の細かさにたとえることができる。アイデアをその網ですくおうとするとき、目が粗ければそれほど正確さの失われる情報が多く、話者の意図していた内容との間に溝ができる。逆に網が十分細やかであれば、それだけ話者の意図を尊重した訳を打ち出すことができる。それでは具体的にどう訓練したらいいのか。この問いに答えてくれるのが、『表現モデル』という概念である。

現代仏作文のテクニック

現代仏作文のテクニック

 

  今回の記事の目的は本書を紹介することにあった。筆者の大賀正喜氏が提案するのが、先に述べた「表現モデル」という武器である。生きたフランス語をたくさん読んでこの武器を充実させ、それを作文に生かすというのが氏のスタイルである。ここに読解という入力と、作文という出力の間の緊密な関係をみることができる。

 50の比較的長い例文(大部分は中学高校の教科書、または『現代用語の基礎知識』から引用されている)を題材とし、訳し筋を細かく丁寧に解説する。フランス語に訳しにくい日本文があるとき、文字という形式にとらわれずいかにうまくその裏に「表現モデル」を見透かすかが、訳出の鍵になると氏は言う。

 日常のフランス語の大部分が、この表現モデルを充填する各単語をある許容範囲内で挿げ替えることによって成り立っている、というのが筆者の慧眼である。たとえば数の増減といった普遍的な内容を表現するのに、核となる部分はこの表現モデルにより統一的に把握できるのである。個々の表現モデルについては本書を覗いてもらうことにして、ここでは筆者が主張する、語学学習において大切な心構えを述べたい。

 1 表現モデルの獲得という問題意識のもと、読書を通して生きたフランス語を吸収し続け、語感を新鮮に保ち、武器庫を充実させることによって初めて作文の力が向上するということ。そして逆に、作文をすることで問題意識が喚起され、読書の仕方もきめ細かになっていくという事実を忘れないこと。この二つの作業を絶えず往復することで、フランス語の能力は飛躍的に高まる。

 2 単語と単語を一対一に結び付けようとしないこと。訳をするときはいつも、アイデアという中間項を通してグローバルな対応をつけること。

 3 単語のみを記憶するのではなく、その単語が表現モデルの中でどのように運用されるのかを知ること。またある表現モデルを知ったとき、そのモデルを充填する各単語がどの単語と交換可能なのか、その許容範囲の目星をつけること。

 筆者は実際に多くの生徒を前に教鞭をとっており、翻訳の経験も豊富である。そのようなキャリアのなか築かれた表現モデルという武器の威力は、次の著作で理解できる:

和文仏訳のサスペンス―翻訳の考え方

和文仏訳のサスペンス―翻訳の考え方

 

  メランベルジェ氏は日本語を巧みに操るフランス語教師である。この方と大賀氏が、共通の例文を訳出しその差異の由来を検討しようというものである。これをみるとわかるように、大賀氏の訳はフランス人のそれとほとんど違わないのである。これは驚くべきことだ。締めくくりに大賀氏の印象的な言葉を引用しておく。

 私はいまだに仏作文に苦しめられていますが、ときどきふっと夏目漱石の「夢十夜」に出ているつぎのような話を思いだします。運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいるというので見に行くと、見物人の評判には委細頓着なくのみと槌を動かして、仁王の顔あたりをしきりに彫り抜いている。無造作にのみをふるっているその下から、小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上ってくる。「能くああ無造作にのみを使って思ふ様な眉や鼻が出来るものだ」と感心して独りごとを言うと、そばに居た男が「なにあれは眉や鼻をのみで作るんぢゃない、あの通りの眉や鼻が木の中に埋ってゐるのをのみと槌の力で掘り出す迄だ。丸で土の中から石を掘り出す様なものだから決して間違ふ筈はない」

 仏作文もこれに似たようなものだと思うのです。表現モデルにかんする限り、われわれが発明する余地はまったくないのです。

 

仁王像の写真はこちらからいただきました:

「仁王像~仏像彫刻」 念佛宗(念仏宗)無量寿寺 佛教之王堂 社寺仏教美術 nenbutsushu007 - 写真共有サイト「フォト蔵」

 

言葉は思考する(十三)――アルツハイマー病を検知する血液検査が確立されるが、受診への抵抗も

サンテーズ(綜合)という作業

 今回は趣向を変えて、複数の記事をサンテーズ(synthèse)してみたいと思う。サンテーズとはその定義から「綜合」のことである(「分析」の対義語)。ばらばらに散らばった要素に共通する「核」を抽出して、まとめあげ整理する作業のことを言う。念のため意味を仏仏辞書で引くと

opération intellectuelle par laquelle on rassemble les éléments de connaissance concernant un object de pensée en un ensemble cohérent (PETIT ROBERT) 

とある。すなわち「ひとつの思惟の対象に関与する複数の知見を、矛盾なく関連付けてひとつの全体にまとめあげる作業」である。この意味を見てわかるとおり、これは非常に高度な知的プロセスだ。母語でもしっかりできるかあやしいところだが、例えば論文などを執筆する際にはこの作業を経なければならない。それまでの研究がどのような対象を明らめようとし、どのような成果を得、どのような問題点、改善点が提起されたのかを、数十(あるいは数百)の論文から抽出、整理しなければならない。

 上記のような理由もあるが、実のところ第一の動機はDALF C1への合格である。DELF/DALFというのはフランス語の資格試験で、仏検やTCFと並んで代表的である(僕はDELF B2を一度受験したのみ)。何の略かというと、DELF(diplôme d'études en langue française)、DALF(diplôme approfondi de langue française)だ(デルフ・ダルフと読む)。仏検とは違い、ヨーロッパ基準の資格試験である。またTCFと違い記述式の問題で、面接もある。よって語学能力を正確に測ることが期待できる(と僕自身は思っている)。ついでながら、一度合格したら死ぬまで効力は消えない。

 もう三年ほど前になるが、僕は留学する前に一度DELF B2を受験した。結果は43点で見事不合格。ちなみに合格するには最低50点要る(また四つのパート聴解・読解・文書作成・面接でそれぞれ最低5/25点以上)。リスニングはぼろぼろで、ほとんど聞き取れていなかった。確か医療関係の話だったと記憶している。また文書作成も語彙力不足のせいで思ったように点を稼げなかった。唯一できがよかったのが面接で、お題は「パリ郊外の学校での体罰について」であった(本当はもうひとつお題があってどちらかを選べるのだが、もう一方が何であったかは忘れた)。

 手元にあるDELF/DALFのパンフレット(2013年版)を見ると、それぞれのレベルに合格するために求められるフランス語運用能力の指標(cadre européen commun de référence pour les langues)が書いてある。一番下はA1で初級者がこのレベルにあたる。そこから順にA2、B1、B2、C1、C2と要求される能力が高度になっていく。B2までがDELFで、そこから上がDALFに分類されている。参考までにB2、C1合格のために求められる力を引用しておく。

DELF B2:フランス語を全般に渡って自主的に運用できる。複雑なテキストの要点を理解すると同時に、一般的あるいは専門的な内容の会話に参加し、筋道の通った意見を明確に詳細に述べることができる。

DALF C1:フランス語の優れた運用能力を持つ。含みのある難解な長文テキストであっても、その殆どを理解し、自分の社会的立場や仕事、学問との関わり、あるいは他の複雑なテーマについて、流暢かつ理論的に述べることができる。

 三年前はB2のレベルに達していなかった。そこから最小限の時間はフランス語のために割いてきたつもりだし、留学もした(語学ではなく数学を勉強してきたのだが)。そこで冷静に自分の立ち位置を観察すると、やはりB2のレベルはすでに突破しているだろうと思う。そこで次のレベルであるC1を視野に入れて語学に励みたいわけだが、ここでひとつ困難がある。

 それが文書綜合(synthèse de documents)だ。複数の文書から共通のキーになる概念を抜き出し、まとめて整理する試験があるのだ。上述の基準を見ると分かる通り、ここまでくると語学能力というよりも個人の基礎的な思考力・表現能力が重要になってくるとわかるだろう。この本来の力を邪魔しない程度のフランス語運用能力が必要だといっているわけだ。

 文書綜合に際してはいくつか注意しなければらない点がある。

  1. 自分の意見を述べてはならない
  2. 綜合に当たって、本文に用いられている表現を真似てはならない(自分の言葉で表現しなければならない)
  3. 文書作成に際して、構成は導入+展開で、結論部分は求められない限り必要がない
  4. 一人称表現を用いてはならない(jeやnous)
  5. 指定された語数を順守する

 自分の言葉で記事をまとめなければならないので、同じことを別の言い方で表現できなければならない。つまり豊かな語彙力が要求される。また自分の意見を勝手に織り混ぜてはならない。書かれてあること、主張されていることに忠実でなければならない。なので記事の内容を理解できていることは大前提で、そこからどういうふうな具合で主要なアイデア(またそれに付随する副次アイデア)を総合し、第三者に理解しやすい形で文章としてまとめるか、ということが問われている。

 いってしまえば機械的作業であるが、複数の記事にまたがるキー概念を見抜き、それをみやすい形で(これも自分勝手にではなく、本文に忠実かつ合理的な仕方で)表現し直すのは、決して簡単なことではない。しかも試験では制限時間があり、辞書も使えない。よって自前の語彙でなんとかやりくりしなければならない。

 つまりまとめてしまうと、これがDALFを難しくしている第一の要素なのだ。そこでなんとしてでも対策する必要がある。そしてこの対策により、フランス語のみならず母語においても、綜合の力が向上すると考えられる。この記事でサンテーズをするのは、もちろん自分の動機付けのためでもあるし、またこれからこの試験を受験しようとしている人たちに、合格のためのヒントを提供できたら、とも考えているからだ。

今回サンテーズする文書

 本文をここに記載すると無駄に記事が長くなるので、リンクを貼りつけておく。どちらもHuffpostの記事だが、記事の途中には、「Lire aussi」の欄(関連する記事の欄)に似たような話題を扱った記事へのリンクが貼られている。これを利用して負荷なく(関連する記事を集めるという労力なく)サンテーズの訓練を積むことができる。本文はできれば印刷して、紙面に直接メモできるようにしておくとよい。

 また草案を練る際には、フランス語ではなく日本語でまとめると時間がかからない。ただしそこには主要なアイデアと、それに付随する二次アイデア、およびそれらを関連付けて再構成するおおまかな方針だけ書いておいて、あとはフランス語で考えるとうまくいく。

1) Dépistage de la maladie d'Alzheimer: un test sanguin qui dépisterait précocement les risques

2) Dépistage de la maladie d'Alzheimer : 10% des Français refuseraient de faire le test

 今回、記事の内容としては類似し過ぎている。本来はひとつの対象をもう少し異なる視点で眺めたものを集めてサンテーズするといい練習になる。また本文も長くはないので、簡単に200語前後でまとめあげる。以下がその結果である。かかった時間は一時間弱だ。また結論に当たる部分もあるが、本来指示がなければ書いてはならない。ここでは個人的に「今後の展望」がないと気持ちが悪いので付け加えた。

 

(イントロ)

  De plus en plus de Français sont atteints de la maladie d'Alzheimer, mais il n'existe pas de remède décisif contre cette maladie. Pourtant, des chercheurs ont établi le test sanguin permettant de détecter l'apparition de la maladie. D'autre part, une étude montre que 10% des Français hésiteraient à passer ce genre de tests.

 

(展開部分)

  La prise de sang n'est pas coûteuse par rapport au scanner célébral. C'est le premier atout de ce test. Et surtout, il permet d'évaluer précisément l'état actuel du patient s'il est atteint, grâce à la détection des protéines résponsables de la maladie. Ainsi il est possible de prévenir la maladie, voire d'en empêcher son developpement. En d'autres termes, ce test est beaucoup plus facile à faire, il est efficace, et surtout fiable.

  Cependant, la fiabilité n'encourage pas forcément les gens à se soumettre à ce test sanguin. Premièrement c'est parce qu'ils ont peur du résultat. Se rendre compte que l'on est affecté par une maladie incurable ne serait pas souhaitable pour profiter de la vie. Deuxièmement, ils justifient le fait de ne pas être affectés par leurs symptômes subjectifs. Mais cela est dangereux, puisqu'en effet quand ils ont conscience d'en être atteints, il est souvent déjà trop tard.

 

(結論部分)

  Il est important de trouver le remède contre cette maladie. Mais avant tout, ce qui est indispensable dans la prochaine étape c'est de faire savoir aux gens que si l'on réussit à dépister le début de la maladie, les préparations nécessaires pour lutter contre la maladie sont possibles. (249 mots)

 

 主要アイデアとして「効率がよく安価な評価方法の確立」と、「大衆が検査に示す抵抗」を採用した。そこから具体的な理由を元に組み立てたのがこのサンテーズである。見てもらえばわかるように、おもしろいことなどひとつも主張できない。ただ書かれてある事実を正しい方法で羅列し、関連付けるだけの作業で非常にアカデミックである。 

 また注意してほしいことがあって、結論部分で述べてあることは本文には書いていない。これは僕独自の見解であって、試験では即大幅な減点につながるタブーである。たが個人的にそういった帰結部分がないと楽しめないので付け足すことにしたわけだ。

語彙の確認

1. RESTE A SAVOIRE+間接疑問節で「~はまだ分からない」という意味の成句。

2. DEPISTAGE(rechercher systématiquement et découvrir ce qui est peu apparent, ce qu'on dissimule)だから「システマティックな方法で、隠れているものを発見する」こと。そこからとくに「病気の発見」を指す。

3. ANTICIPER(exécuter avant le temps déterminé)なので「先取りする、前もって実行する」こと。本文では「病気の発覚を意図的に(検査を受けることで)早める」という意味で使われていた。

4. IMAGERIE CELEBRALEとは、MRIで撮影した脳の断面図のこと。

5. ANGOISSER(inquiéter au point de faire naître l'angoisse)だから「苦悩するほどひどく心配させる」こと。

言葉は思考する(十二)――耐性バクテリアの城壁を突き崩す

 

 今回もHuffpostから、耐性バクテリア抗生物質に対して耐性をもつバクテリア)の弱点が発見された可能性があるという内容の記事である:Résistance aux antibiotiques: des scientifiques auraient trouvé la faiblesse de certaines bactéries

 なお過去の記事も参照のこと:

言葉は思考する(六)――銀ナノ細線によるバクテリアの撲滅 - 着想メトロ

 バクテリアそのものを攻撃するのではなく、バクテリアを保護する外壁を突く方法が発見されたかもしれない、というのが研究結果の主旨である。では読解を始める。

 

Ⅰ Des chercheurs ont annoncé le mercredi 18 juin avoir découvert le talon d'Achille de certaines bactéries résistantes aux antibiotiques, une découverte qui pourrait permettre le développement de traitements spécifiques. Cette découverte intervient alors que l'Organisation mondiale de la santé (OMS) vient de lancer un cri d'alarme face au développement rapide des bactéries résistantes aux antibiotiques à l'échelle mondiale.

1-1. TALON D'ACHILLE(le seul point faible)。一般的に非常に強力な者の唯一の弱点を指す慣用句であり、その語源は神話に遡る。アキレスの母テティスは当時子供であった彼の踵を持って支え、大河ステュクスに浸した。こうして水と接した部分は無敵の強靭さを兼ね備えることになる。ただ母が支えていた部分である踵だけは例外であった。後にパリスはこの唯一の弱点を見破り、矢で射抜いてアキレスを殺す。ここでは猛威をふるう耐性菌をアキレスにたとえ、その「踵」を発見したかもしれない、といっているわけだ。

1-2. SPECIFIQUEはこの場合「ある特定の病気に対する」という意味。

1-3. LANCER UN CRI D'ALARMEはひとかたまりで「警告を発する」。

☞読解の早さ(これは競う意味での早さではなく、純粋に意味を掴む早さ)はこのような成句、より一般に「かたまりであるひとつの意味単位を形成する部分」をいかに見抜くか、ということに大きく左右される。実際的にも試験で読解問題を解くときは、慣用句や成句に慣れていると解答までにかかる時間が大幅にカットされる。個々の単語(つまり文章の局所部分)を丁寧に洗う前に、このような大局的構造を視野に入れて労力を削減しよう。スローガンとして掲げれば、「読解はマクロからミクロへ」となる。もちろんこの逆の流れも大切だが、個々の単語の指示内容は、だいたい文章の大きな流れの中に埋め込まれることでかなり特定される。そのあとの細かいニュアンスを掴むにはさらに繊細な読解力が必要だが、これは後回しでいいだろう。

Ⅰ 六月十八日水曜日、研究チームは抗生物質に耐性を持つある種のバクテリアの決定的弱点を発見したと報告した。この発見によって、特定の病気に対する治療法が確立される可能性がある。一方このとき世界保健機関は、世界規模で進行する、バクテリア抗生物質に対する急速な耐性獲得に警告を発したところであった。

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