着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

SHARKOVSKYの定理に浪漫を感じる

定理の内容を述べるに留める。なお定理の証明に関しては、

http://www.tufts.edu/as/math/Preprints/BurnsHasselblattShort.pdf

を参照のこと。

まず準備として、「SHARKOVSKY列」を定義する。

正の整数に対して順序\( \; \prec \; \)を次のように定義する:

\(3\prec 5\prec7\prec\cdot\cdot\cdot\)

\(\prec2\times 3\prec 2\times 5\prec  2\times 7\prec \cdot\cdot\cdot\)

\(\prec 2^{2}\times 3\prec 2^{2}\times 5\prec 2^{2}\times 7\prec\cdot\cdot\cdot\)

\(\prec 2^{3}\times 3\prec 2^{3}\times 5\prec 2^{3}\times 7\prec\cdot\cdot\cdot\)

\(\cdot\cdot\cdot \prec 2^{5}\prec 2^{4}\prec 2^{3}\prec 2^{2}\prec 2\prec1\).

すなわち順に奇数、奇数に\( \; 2 \;\)を掛けたもの、奇数に\( \; 2^{2} \; \)を掛けたもの、奇数に\( \; 2^{3} \; \)を掛けたもの、ついには\( \; 2 \; \)のべき乗を高次の順に書き出していき、後のほうにいくに従って大になる順序数(順序が定義された数)がSHARKOVSKY列である。

SHARKOVSKYの定理

「\( \mathbb{R} \;\)で定義された連続な写像\( \; M(x) \; \)が\( \; p \; \)周期軌道をもつとすると、\( \; M(x) \; \)はSHARKOVSKY列で\( \; p \; \)より大なるすべての数\( \; l, \; p \prec l \; \)に対応する\( \; l \; \)周期軌道をもつ」

この定理のすごさがわかるだろうか。もし\( \; M \; \)が周期\( \; 3 \; \)の軌道をもつとすると、\( \; M \; \)は任意の正の整数\( \; l \; \)に対して\( \; l \; \)周期軌道をもつことになるのである。よって周期\( \; 3 \; \)の窓にはすべての周期軌道が存在することになる。

この定理を知ったときは驚いたが、ウィキペディアにも日本語のページがないのをみると、日本ではあまり知られていないようである。

参考:Chaos in Dynamical Systems - Edward Ott - Google Livres