着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

長文読解(1)

 

 大学受験で必須となる科目のひとつに英語があります。受験生に重要な英語長文読解が上達するためのアドバイスをいくつか挙げ、記事にしたいと思います。

読解とは話の内容を理解することではない

 まず読解とはそもそもなんぞや、というところから始めます。読解というのは読んで字の如く、読み解くことです。いくつかの設問があり、それらに一定時間内に答えなければなりません。そのためのヒントは本文中に書いてあります。よってこれらのヒントを的確に探し当て、そこから正答を判断しなければなりません。

 注意する必要があるのは、必ずしも設問への答えがそのまま本文にあるというわけではないことです。確かにヒントは必ずあるものの、正答への確信が持てず、比較検討をし、消去法なども試みた上で、総合的に判断する必要もときにはあります。また単純な文法知識が勝敗を分けるときもあります。

 

 読解には必ず出題者がおり、理詰めで対処できるよう予め問のレベルが調整されています。言い換えれば、高校生の頭で理解できないことが、解答に必要になることはないということです。英文自体の内容が高度であることはままありますが、問のレベルはそれに比べて落ちるのが普通です。

 ここでよくある思い違いを指摘したいと思います。多くの生徒が、読解は話を理解しなければならないと思っていることです。

 例えば現代文で解く論説は理解できるでしょうか。もしそうであればその方は進んだ理解力を持っているのでしょう。高校生の頃の僕の場合は、小林秀雄の文章などさっぱりでした。言い方は変になりますが、こういう文章は解くからこそ解けるのであって、それは文章の理解と関係はしていても基本的には別物だと思います。英語でも話は同じです。

 もちろん、筆者の言っていることがわかるのは良いことであり、それを否定するのではありません。その人はその人自身の経験からわかるのでしょう。言っていることがわかることと、話の筋、論旨を追えるということは別物だという意味です。そして読解には後者だけで十分なのです。「筆者はこうこうこうした理由でこうだと言っている。なぜそれが理由になるのかも、どうしてその結論がでてきたかもさっぱり分からない。本文中に書いていないから」程度で十分通用するということです。

読解上達のための必須学習事項

 まず最低限の単語・熟語・文法の知識がなくては読める文章も読めません。二十単語の一文に未知の単語が五個以上出てくるようでは、読解は無理です。これらの予備知識がすでにあるとして話を進めます。なお以下では読解の後に焦点をあてます。読解中のテクニックについては次で扱います。

  1. 英文解釈。英文の構造をどのような意味に解釈できるかを学ぶことは必須です。これにより想像に頼らず、精確で忠実に英文の意味をとることができるからです。有名な形式主語・目的語構文に始まって、so that構文のいろいろなパターンや、(全・部分)否定表現、倒置、仮定法、同格、挿入、関係詞節、不定詞、分詞、分詞構文、さらにイディオムなど、特徴的な構造とそれをどう訳すかを系統的に学習する必要があります。これと同時にSVOCを振ることを覚え、ある文中で同じ役割を担う「意味のかたまり」を抜き出せるよう練習すると良いです。
  2. 精読。読解し終えた英文を、時間を気にせずしっかり読むことをぬかると、基礎的な英文理解力の不足で結局つまずきます。構造解析をした上での全訳。分からない単語や表現があるなら辞書を引き、もっとも文脈に沿ぐう意味を自ら選ぶ。ついでに新出の単語やイディオム、構文は意味と一緒に覚えてしまいましょう。これを参考書の解説だけで代用してしまうと、訳の導出というプロセスを経ないので実戦での解釈力に大きな差が出ます。可能ないくつかの選択肢からその場合に適するひとつを選べる判断力は、読解の後でも養えるのです。英文解釈もそうですが、可能ないくつかの選択肢を持っていて、その中から適するものを選び取る、という意識が大切です。
  3. 再読解。精読した文章についている設問をもう一度解きます。一度目の読解では気を配る余裕のなかった細部も、今では見えています。総合的に、あらゆる観点から設問を吟味し、最適解を導きましょう。

 基本的に以上の三点を長文を読むたびにしっかりこなせば、着実に英文理解力、問題考察力は向上します。こうして英文の理解力が高まってくると、読解のときもリアルタイムで同じことをしようとし、時間が足りなくなったり、詳細までわからず頓挫してしまう、ということがあります。あくまでこのようにして培った英語力・考察力は、読解中に読むべきところをしっかり読むため、考えるべきところでしっかり考えるためだということを忘れないように。

 またできれば全訳は先生などに添削してもらいましょう。ついでに解答の根拠や、本文の要旨、各パラグラフのまとめなどを議論するのもよいでしょう。すべて次の読解のときに活きてくるはずです。