着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

長文読解(2)

 

 次に読解に関するアドバイスを挙げていきたいと思います。読解は(ときには不完全な)パズルのピースを埋めていく作業にたとえることができ、基本的に情報収集戦です。

二つのモードを使い分ける

 読解中は、二つの読み方を意識的に使い分ける必要があります。ひとつは精読、もうひとつは速読です。本文すべてを精読、あるいは速読するのではなく、注意がより必要な箇所、例えば設問に関係のある文や下線部訳をするときなどは、その部分を精読し、設問にあまり関係のない部分、もしくは本格的に読み始める前の情報収集をする段階では、速読、つまりキーワードを拾いつなげていく読み方をするのです。

 この二つのモードをバランスよく使い分けられるようになれば、読解にメリハリがでてきます。よく学生に注意することなのですが、ただ漫然と問題意識もなく読み進めるのなら、それが精読であれ速読であれ、読解は上手くなりません。しっかり見るべきところと、そうでないところを区別するという意識をもつことが大切です。当然、その区別は設問を基準になされます。繰り返しになりまずが、読解とは筆者の主張を理解することではなく、設問に答えるのに必要な情報を収集する戦いなのです。

外堀を埋める

 読解が始まると同時に本文に齧りつくのではなく、本文に関連する情報をまずは外部から収集しましょう。城攻めにたとえるのなら、外堀を埋めることなく突っ込めば敵の格好の的になってしまうということです。まずは周辺から攻略をしていきます。

 タイトルやサブタイトルのある文章(たとえばサイエンスなどの科学雑誌からの出典など)は、そこに注目するだけである程度本文全体、または各パラグラフの扱っている内容に見当がつきます。また出典や脚注にある語彙を参考にすることでも、内容に関する情報が得られます。こうして背景をある程度捉えることで、本文の読解を容易にする準備を整えます。

 また設問にも注目しましょう。内容一致問題の選択肢には、それが合っていても間違えていても、内容の部分的要約になっていることが多いです。ここからでも本文の中身がある程度推察されるでしょう。さらに、このような選択肢は本文の内容を言い換えていることがあり、本文中でたとえわからない表現が出てきても、設問を見ればわかることがあります。

 ただしこれらの情報収集によって得られるヒントは、あくまで本文の内容の大枠を決めるに過ぎず、設問を解くのに必要な詳細には及びません。漠然としたイメージさえ持てれば満足と考えて、あまり時間をかけ過ぎることのないよう注意しましょう。

最初の数文はしっかり読む

 いよいよ本文にアタックするわけですが、まずは最初の数文にしっかり目を通してみましょう。ここは通常イントロダクションのある場所で、本文が何を主題とするか、何を問題とするかが書いてあることが多いのです。また小説風の英文でしたら場面設定などが書かれてあることが多く、いずれにしても内容への導入として見逃すことのできない箇所です。

 さて、ここから先が、大きく読み方の分岐する場所になります。

空欄補充がメインの長文読解

 本文中に空欄があり、そこに適当な一語を補完するという問題がメインである長文は少なくありません。この場合、空欄のごくごく近辺で問題が片付く場合が多く、始めから正直に本文を読み進めていくより効率的である場合があります。

 空欄を含む一文を精読します。文脈をしっかり把握してきていない以上、そこには意味の不明瞭な単語や表現が少なからずあるでしょう。それに惑わされず、冷静に解答に必要十分な情報がそこにあるかを判断します。もしある単語の意味がわからず、しかもその部分が解答に必要であるときは、前の文または直後の文にまで探索の手を拡げ、穴になっている情報を埋めることを目指します。

 必要な情報が近くから見つからない場合、不注意により見逃してしまっているか、もしくは離れた場所に実は情報が潜んでいるか、のどちらかです。いずれにしてもそのようなときはその空欄は一旦置いておき、他をあたりましょう。その過程でヒントが得られることもあるからです。

 このような読み方をすると、常に何か情報が欠けていて、本文の理解が不十分なまま読解を続けることになります。人によっては始めから読み進めていき、設問に当たるごとに解いていく、というスタイルが適していることもあります。時間的な猶予の多寡にもよるでしょう。このあたりは読解をしてみて、徐々に自分のスタイルを開発していくのがよいです。過去問の出題傾向が特殊であれば、それに合わせた読み方を練習してもよいでしょう。

記述式で、内容説明・内容一致問題が多い長文読解

 始めから本文を読み進め、問いにぶつかったらそこまでで得た情報を吟味し、解答に足りないピースがあればもう少し読み進める。このようにして読解していくのが正攻法でしょう。内容説明で字数制限のある設問でしたら、短く必要な要素をメモしておき、十分情報収集が済んだところで解答を書き起こすと良いでしょう。設問にちゃんと答えているかの確認を忘れないように。また内容一致問題であれば、選択肢の論点になる部分(本文との比較吟味が必要な部分)に注目し、本文を参照し回答していきましょう。このとき、もし選択肢がグレーだった場合、無理に選ぶことはせず、判断を先送りにできることも念頭に置いておきましょう。

 このように上から下へ直線的に読み進める場合、意味のわからない単語や文があってもあまりこだわり過ぎないようにしましょう。設問を確認したあと、どの部分が重要な情報になり得るかがわかっている状態(問題意識がある状態)で、初めて精読する必要のある箇所が出てくる(わかってくる)からです。

背景知識をおさえる

 ある長文は簡単に読めるのに、ある長文はまったく歯が立たない。このような経験をしたことのある方は多いと思います。これには背景知識の存在が原因となっていることが多いです。

 ある特定の分野で何が問題とされ、いま論点は何に移っているのか、むかしはどうだったか。その分野で使われる専門用語にはどのようなものがあり、その定義はなにか。これらの知識はいうまでもなく読解の大きな助けとなります。論旨がある程度予想できるからです。よって英語の知識のみならず、各分野に偏りのない興味・関心を持っている人は、長文読解に優れていることが多いことになります。このような目的を補助してくれる参考書として『リンガメタリカ』をおすすめしておきます。 

話題別英単語リンガメタリカ[改訂版]

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単語の指す意味内容は毎回異なる

 長文読解において、未知の単語に出会うことは避けられない事態です。前後の文脈からの類推ができることは長文読解に必須の要素ですが、既知の意味でその単語がその英文中で使われているわけでもない、ということも注意しておきます。意味内容を限定するのは文脈、あるいは筆者の使用法であり、単語そのものの持つ意味と関連を保ちながら、ある範囲で自由にその指し示す対象を変化させます。このことに留意し、知っている単語だからと油断しないようにしましょう。