着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

『途中で止めても構わない』ホラーゲーム

夏ということで、ホラーな話題を 

 最近話題沸騰中のホラーゲーム、『サイレントヒルズ』について言及したかったのでひとつ独立した記事を書く。以下の記事も参照のこと:

【GC 14】『MGS V:TPP』パーティーレポートその2、小島監督による話題の『P.T.』ネタばらし | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

 このゲームはシリーズもので、個人的には過去の作品をプレイしたことはない。宣伝用として無料でダウンロードできる体験版の実況動画を拝見して、「これは怖(恐)い」と感じた次第である。

 体験版ダウンロード・コンテンツのタイトルは『p.t.』で、これはプレイアブル・ティザー(playable teaser)の略だ。teaserの意味は以下の通り:

[teaser] an advertisement for a product that does not mention the name of the product or say much about it but is intended to make people interested and likely to pay attention to later advertisements 『オックスフォード現代英英辞典』

 つまり「製品の名前に触れないか、もしくはあまり多くの情報を意図的に与えないことで、逆に人々の関心や興味を引くような広告」のことである。だからp.t.はプレイできるティーザーという意味だ。

 この言葉の意味する通り、プレイヤーは多くの情報を欠いた状態でゲームを進行することになる。これが後に述べることになる「コワさの要因」の第一なのだが、それはひとまずおいておき、百聞は一見に如かず、プレイ動画をみて欲しい。

 以下に紹介するのはp.t.の実況プレイ動画である。個人的にお気に入りの二人をここでは挙げておく。まずは有名な実況者ガッチマンさんのプレイ動画を: 


【実況】P.T.(サイレントヒル)がめっちゃ怖かった - YouTube

動画のサムネイルだけでも雰囲気が伝わってくると思う。ちなみに7780sの7780は静岡(サイレント(静)ヒル(岡))の面積であり、最後のsはサイレントヒルズのズからとったものである。次に挙げるのはhyorokunさんの動画:


(実況)P.T.サイレントヒル絶叫プレイ#1 科学的にありえへんを攻略 - YouTube

実況者の面白いトークで恐怖が多少軽減されている。それでもまだ怖い。

 ゲームはL字型の至極簡単なデザインをした家屋内で展開される。たった一本の廊下だが、これが次第に、プレイヤーを一歩も先へと進ませない恐怖に支配されることになる。

 非常にリアルな質感を実現しているグラフィックのレベルの高さは、コワさを引き立てる要因のひとつとなっている。ところが小島氏によると、これでも手を抜いているらしい。またこのゲームでは「音」も重要な鍵を握っている。実際「ラジオ」という媒体を介して「何か」の接近をこちらは知ることができるからだ。

 廊下のあちこちに姿を現す「何か」の存在に対して、こちらからは何もできないことも、恐怖の大事なポイントだろう。来る製品版ではこちらからなんらかのアクションを仕掛けられるようになるとは思うが、それでも「逃げる」選択を第一にしてほしい。小島氏は謎とき要素に力を入れる意図を示しているが、「謎とき」と「逃走」は噛み合っても、「謎とき」と「戦闘」はマッチしない。逃げる緊張感の中での謎とき、これこそ極限の恐怖を生みだす状況なのではないか。要するに主人公が強すぎたら駄目なのだ。この点、outlastの恐さに通じるものがある:


【実況】かなり怖い逃げゲームOUT_LAST:01 - YouTube

 まとめとして、この体験版のコワさの要因を箇条書きにして挙げていきたいと思う。

  • ループする度に少しずつ変化する空間
  • 主人公の無力さ
  • (自分の置かれている状況に対する)情報の少なさ
  • 映像のリアルさ

特に情報の少なさは小島氏も挙げている重要なポイントであって、ここが製品版のように事前に多くの情報が与えられている場合と決定的に異なる。

 この体験版は「襲ってくる恐さ」と同時に、雰囲気もしくは場そのものが放つ禍々しい「粘りついてくる怖さ」も実現している。この二つの長所を、製品版では存分に引き出して、本当に漏らしてしまうくらいのホラーゲームを作ってほしい。

 最後にゲーム中に繰り返し現れる『204863』という数字の羅列について、様々な憶測が飛び交っているようだ。小島氏の誕生日のコード化をいう説もあるだろうが、僕がゲームのクリエイターだったら自分の誕生日をわざわざ作品の中に暗号化して入れたりはしない。それよりも製品版についての情報へと導くヒントを隠すだろう。

 2048年6月3日は小惑星が地球軌道と重なる危険があるとされている日付である。

 またネット上で検索をしているとstipers hillという場所にも辿りついた:

http://www.geograph.org.uk/photo/204863

URLの末尾がその番号となっていて、かつ「丘」であるから関係がないとも限らないが、偶然の可能性のほうが大きい。

 いずれにしても何らかの意味はあるだろう。製品版を手に入れるのが楽しみだ。