着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

\( L^{p} \; \)空間がBanach空間であることの証明

まずは次の補題を証明する。

補題a. ノルム空間\( \; X \; \)が完備であるための必要十分条件は、\( \; X \; \)の点列\( \; \{ u_{n} \} \; \)で\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; \|u_{n+1}-u_{n}\|<\infty \; \)を満たすものはすべて\( \; X \; \)で収束することである。

 

証明。必要性から始める。条件を満たすような点列がCauchy列であることを示せば、完備性によって収束が言える。数列\( \; \{U_{N} \} \; \)を\[ U_{N}=\sum_{n=1}^{N} \; \|u_{n+1}-u_{n}\| \]

で定義すると、この数列は単調増大かつ有界であるから収束する。よってCauchy列である。すなわち\( \; N>M \; \)として、任意の\( \; \varepsilon >0 \; \)に対して\( \; N' \; \)があって\[ M \geq N' \Longrightarrow |U_{N}-U_{M}|=\sum_{n=M+1}^{N} \; \|u_{n+1}-u_{n}\|<\varepsilon. \] 

よって\( \; N>M, \;\;\; M\geq N' \; \)ならば\[ \begin{eqnarray*} \|u_{N+1}-u_{M+1}\| &=& \|(u_{N+1}-u_{N})+(u_{N}+u_{N-1})+\ldots+(u_{M+2}-u_{M+1})\| \\ &\leq& \sum_{n=M+1}^{N} \; \|u_{n+1}-u_{n}\|<\varepsilon. \end{eqnarray*} \]

十分性。点列\( \; \{ u_{n} \}\ \; \)がCauchy列であると仮定する。ここから仮定の条件を満たすような部分点列を選別しよう。\( \; \varepsilon_{n}=1/2^{n-1} \; \)を固定するたびに、ある\( \; N(n) \; \)が定まって、\[ N, \; M \geq N(n) \Longrightarrow \|u_{N}-u_{M}\|<\varepsilon_{n}. \]

よって番号\( \; l(n) \; \)を\( \;  l(n)=\max_{n} N(n) + n \; \)とおけば、\( \; l(n)<l(n+1)\; \)かつ\[ \|u_{l(n+1)}-u_{l(n)}\|<\dfrac{1}{2^{n-1}} \]

で、\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; \|u_{l(n+1)}-u_{l(n)}\|=1<\infty \; \)である。そこであらためて\( \; u_{l(n)}=v_{n} \; \)とおくと、仮定によって \( \; \{v_{n}\} \; \)は\( \; X \; \)で\( \; u \; \)に収束する。ところが\[ \|u-u_{n}\|\leq\|u-v_{n}\|+\|v_{n}-u\| \]

であり、右辺第二項は\( \; v_{n} \to u \; \)から、第一項は\( \; \{ u_{n} \} \; \)が\( \; X \; \)のCauchy列であることから、任意の\( \; \varepsilon >0 \; \)に対して\( \; n \; \)を十分大きくとれば、ともに\( \; \varepsilon/2 \; \)よりも小さくできる。結局\[ \|u-u_{n}\|<\varepsilon. \]

以上で\( \; X \; \)が完備であることがわかった。

それでは\( \; L^{p} \; \)空間がBanach空間であることを証明する。完備性を示せば十分である。\( \; 1\leq p < \infty \; \)とせよ。

証明補題aにより、\( \; u_{n} \in L^{p} \; \)かつ\( \; A\equiv \sum_{n} \; \|u_{n+1}-u_{n}\|_{L^{p}(\Omega)}<\infty \; \)を仮定しておいて、\( \; u_{n} \; \)が\( \; L^{p}(\Omega) \; \)で収束することを示せばよいことになる。 以下簡単のため\( \; \|\cdot\|_{L^{p}(\Omega)} \; \)を単に\( \; \|\cdot\| \; \)と書くことにする。\[ v_{N}(x)=|u_{1}(x)|+\sum_{n=1}^{N-1} \; |u_{n+1}(x)-u_{n}(x)|, \;\;\; v(x)=\lim_{N \to \infty} v_{N}(x) \]

とおく。零集合上での値が発散していても積分結果に影響は出ないので、たとえば\( \; u_{1} \in L^{p}(\Omega) \; \)がある一点\( \; x \in \Omega \; \)で発散していても矛盾はないことに注意。\( \; L^{p} \; \)空間のノルムが積分によって与えられている以上、零集合上での関数値は問題としないのである。よって\( \; v(x)=\infty \; \)ということもありえる。

さて、\( \; \{v_{N} \} \; \)は非負値関数の非減少列であり、明らかに\( \; v_{N} \in L^{p} \; \)かつ\[ \begin{eqnarray*} \|v_{N}\| &=& \left | \left | u_{1}+\left ( \sum_{n=1}^{N-1}\; |u_{n+1}-u_{n}| \right ) \right | \right |  \leq \|u_{1}\|+\sum_{n=1}^{N-1} \; \|u_{n+1}-u_{n}\| \\ &\leq& \|u_{1}\|+A \end{eqnarray*} \]

であるから、単調収束定理により\( \; v(x)<\infty \; (a.e.) \; \)で\( \; v \in L^{p}. \; \)

したがってほとんどいたるところの\( \; x \; \)(つまり\( \; v(x) \; \)が発散しないような\( \; x \; \))で\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; |u_{n+1}-u_{n}| < \infty \; \)が成り立つ。そこで\[ u_{N}(x)=u_{1}(x)+\sum_{n=1}^{N-1} \; u_{n+1}-u_{n} \]

はほとんどいたるところ絶対収束する。すなわちその極限を\( \; u \; \)とおくと\( \; u_{N} \to u \; (a.e.) \; \)である。可測関数の極限は可測であるから\( \; u \; \)も可測で、明らかに\( \; |u_{N}(x)|\leq v(x) \; \)だから\( \; |u(x)|\leq v(x) \; \)、すなわち\( \; u \in L^{p} \; \)である。

さらに\[ |u_{N}(x)-u(x)|^{p}\leq2^{p-1}(|u_{N}(x)|^{p}+|u(x)|^{p}) \leq 2^{p}v(x)^{p} \]

だからLebesgueの収束定理が適用できて、\[ \|u_{N}-u\|^{p}=\int_{\Omega} \; |u_{N}(x)-u(x)|^{p}dx \to 0. \]

すなわち\( \; L^{p} \; \)空間は完備、したがってBanach空間である。

 

関数解析 共立数学講座 (15)

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