着想メトロ

アイデアとは、世界の捉え方を再構成することで新たな価値を獲得し、さらにそれを経験によって持続させる、一連のプロセスのこと。

関数列の一様収束性と無限級数への応用

定義。区間\( \; I \subset \mathbb{R} \; \)上で定義された連続関数の列\( \; \{ f_{n}(x) \} \; \)が\( \; I \; \)上で\( \; f(x) \; \)に一様収束するとは\[(*) \;\;\; \forall \; \varepsilon>0, \;\;\; \exists \; n', \;\;\; \forall \; x \in I, \;\;\; n\geq n' \Longrightarrow |f(x)-f_{n}(x)|<\varepsilon \]

とできることをいう。ここで\( \; n' \; \)は\( \; \varepsilon \; \)には依存するが、\( \; x \in I \; \)には依存しない自然数であることに注意:\( \; n'=n'(\varepsilon). \; \)

つまりこちらが勝手にある正数を決めて固定すると、それに応じて\( \; x \in I \; \)には無関係なある自然数が定まる。こうして得られた番号\( \; n' \; \)は閾値の役目を果たしていて、それ以上の番号ならどのような自然数\( \; n \; \)であっても\( (*) \)が成り立つということである。これは言い換えると、関数列の収束の仕方が\( \; x \in I \; \)によらないで一様であることを意味している。この便利な性質から導かれるいくつかの補題を証明していく。

 

補題a. 一様収束極限は\( \; I \; \)上連続である。

証明。\( x, \; y \in I \; \)として\[ \;  \begin{eqnarray*} |f(x)-f(y)| &=& |(f(x)-f_{n}(x))+(f_{n}(x)-f_{n}(y))+(f_{n}(y)-f(y))| \\ &\leq& |f(x)-f_{n}(x)|+|f_{n}(x)-f_{n}(y)|+|f_{n}(y)-f(y)| \end{eqnarray*} \; \]と評価できることに目をつける。任意に正数\( \; \varepsilon \; \)を定める。いま\( \; x, \; y \in I \; \)は固定されていて\( \; n \; \)が動的である。関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)の一様収束性によりある\( \; n'(\varepsilon) \; \)が存在して\[ n\geq n'(\varepsilon) \Longrightarrow |f(x)-f_{n}(x)|, \;\;\; |f(y)-f_{n}(y)|< \dfrac{\varepsilon}{3}. \]

次にそのような\( \; n \; \)を固定し\( ( \; n\geq n'(\varepsilon) ) \; \)、\( \; x, \; y \in I \; \)を動かす。関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)の連続性によって、ある\( \; \delta(\varepsilon, \;n)\equiv \delta_{n} > 0 \; \)が存在して\[ |x-y|<\delta_{n} \Longrightarrow |f_{n}(x)-f_{n}(y)|<\dfrac{\varepsilon}{3} \]

が成り立つ。以上から任意の\( \; \varepsilon > 0 \; \)に対してある\( \; \delta_{n}>0 \; \)があって\[ |x-y|<\delta_{n} \Longrightarrow |f(x)-f(y)|<\dfrac{\varepsilon}{3}+\dfrac{\varepsilon}{3}+\dfrac{\varepsilon}{3}=\varepsilon. \]

補足。\( \; \delta_{n} \; \)が\( \; n \; \)に依存していることに違和感をもたれるかもしれない。これはいまある関数列の一様収束極限としての\( \; f \; \)に関心をもっているからである。示したいことは結局\( \; \delta_{n} \; \)の存在であって、\( \; \delta \; \)に課されている条件は正であること以外なにもないから補題の証明は完了した。

議論の中に二つの動的要素(すなわち\( \; x \; \)と\( \; n \; \))が混在することに注意。最初の変形で極限関数の連続性が、関数列の連続性で議論できる項と、関数列の一様収束性で議論できる項の和でおさえられることがわかり、さらに分解された各項では動的要素がひとつに限られ、議論が明解になっているのである。

直観としては、関数列で\( \; f \; \)をいくらでも近似できて、かつ関数列そのものが任意の\( \; n \; \)に対して連続であるのだから、十分大きな\( \; n \; \)をとって近似の精度を高めておいて、そのあと\( \; |x-y| \; \)を十分小さくとれば、結局極限関数も連続であることがわかる。この直観的洞察の結晶が、最初の評価で用いた三角不等式に他ならない。

定義区間\( \; I \subset \mathbb{R} \; \)上で定義された連続関数の列\( \; \{ f_{n}(x) \} \; \)が\( \; I \; \)上で\( \; f(x) \; \)に広義一様収束するとは、\( \; I \; \)に含まれる任意の有界閉区間\( \; J \; \)上で、\[ \;\;\; \forall \; \varepsilon>0, \;\;\; \exists \; n', \;\;\; \forall \; x \in J, \;\;\; n\geq n' \Longrightarrow |f(x)-f_{n}(x)|<\varepsilon \]

とできることをいう。具体的な例をもとに一様収束と区別しなければならない理由を考える。

区間\( \; I=(0, \; 1] \; \)で定義された連続関数\( \; f(x)=1/x \; \)が、連続な関数列\[ f_{n}(x)= \begin{cases} 1/x, & x \in [1/n, \; 1] \\ n, & x\in(0, \; 1/n) \end{cases} \]

の、有界閉区間\( \; J \subset I \; \)上での一様収束極限であることは簡単に確かめられる。ではこの関数列は\( \; I \; \)上で\( \; f \; \)に一様収束するだろうか。答えは否である。実際任意にある正数\( \; \varepsilon \; \)を定めたとすると、\( \; x \in (0, \; 1/n) \; \)に対して\[ |f(x)-f_{n}(x)|<\varepsilon \Longleftrightarrow n>1/x-\varepsilon \]

となって、\( \; n \; \)が\( \; x \; \)に依存してしまっている。これは任意の有界閉集合で\( \; I \; \)に含まれるような\( \; J \; \)上では\( \; f \; \)は有界だが、\( \; I \; \)上でそうではないためである。このように広義一様収束関数列は、一様収束関数列とは限らない。しかし補題aによって次の補題bが成り立つことは直ちにわかるだろう。

補題b. 広義一様収束極限は\( \; I \; \)上連続である。

次に、極限と積分、また極限と微分の交換を保証してくれる補題を証明する。

補題c. 連続関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)が有界閉区間\( \; I \; \)上で\( \; f \; \)に一様収束しているとすると、\[ \lim_{n \to \infty} \; \int_{I} \; f_{n}(x)dx=\int_{I} \; \lim_{n \to \infty} \; f_{n}(x)=\int_{I} \; f(x)dx. \]

証明。仮定より\( \; I \; \)の測度\( \; \mu(I) \; \)は有限である。任意の\( \; \varepsilon >0 \; \)に対して\[ n\geq n' \Longrightarrow \left | \int_{I} \; f(x)dx-\int_{I} \; f_{n}(x)dx \right | < \varepsilon \]

を成り立たせる自然数\( \; n' \; \)の存在を示せばよい。まず\[ \left | \int_{I} \; f(x)dx-\int_{I} \; f_{n}(x)dx \right | = \left | \int_{I} \; (f(x)-f_{n}(x))dx \right | \leq \int_{I} \; |f(x)-f_{n}(x)|dx \]

と評価できる。\( \; \{f_{n}\} \; \)の一様収束性から任意の\( \; \varepsilon > 0 \; \)に対してある\( \; n' \; \)が存在して\[ \forall x \in I, \;\;\; n\geq n' \Longrightarrow |f(x)-f_{n}(x)|<\dfrac{\varepsilon}{\mu(I)} \]

が成り立っている。ここで不等式の両辺の\( \; \sup \; \)をとれば、固定された\( \; n, \; n\geq n' \; \)に対して\[ \sup_{x\in I} \; |f(x)-f_{n}(x)|\leq \dfrac{\varepsilon}{\mu(I)}. \]

このような\( \; n \; \)を固定したままにしておくと、\[ \left | \int_{I} \; f(x)dx-\int_{I} \; f_{n}(x)dx \right | \leq \int_{I} \; |f(x)-f_{n}(x)|dx \leq \sup_{x\in I}{|f(x)-f_{n}(x)|}\int_{I}dx \leq \varepsilon. \]

補題d. 有界閉区間\( \; I=[a, \; b] \; \)上で微分可能な関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)が\( \; I \; \)で\( \; f \; \)に各点収束し、さらに\( \; f_{n}(x) \; \)の導関数\( \; f_{n}'(x) \; \)が任意の\( \; n \; \)に対して連続で、\( \; \{f_{n}' \} \; \)が\( \; I \; \)上で\( \; g \; \)に一様収束するとする。このとき\( \; f\; \)は\( \; I \; \)で微分可能で\( \; f \; '(x)=g(x) \; \)であり、\[ \lim_{n \to \infty} \; \dfrac{d}{dx}f_{n}(x)=\dfrac{d}{dx}\lim_{n \to \infty} \; f_{n}(x)=\dfrac{d}{dx}f(x). \]

証明微積分学の基本定理により、\[ f_{n}(x)=\int_{a}^{x} \; f_{n}'(x)dx+f_{n}(a) \]

が\( \; x \in I \; \)の各点で成り立っている。ここで\( \; n \to \infty \; \)の極限をとれば、補題cによって\[ f(x)=\int_{a}^{x} \; g(x)dx+f(a). \]

補題aによって一様収束極限は連続であるから、上式は\( \; f \; \)が\( \; I \; \)上で微分可能かつ\( \; f'(x)=g(x) \; \)であることを意味している。すなわち\[ \dfrac{d}{dx}f(x)=g(x)=\lim_{n \to \infty} \; \dfrac{d}{dx}f_{n}(x). \]

次に、今まで得られた結果を関数の級数列に応用してみる。いまここに関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)があるとする。ここから新たに級数列\( \; \{ F_{N} \} \; \)を\[ F_{N}=\sum_{n=1}^{N} \; f_{n} \]

で定義する。問題となるのはこの級数の収束性である。

定義。区間\( \; I \subset \mathbb{R} \; \)上で定義された連続関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)からつくられる無限級数\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; |f_{n}(x)| \; \)が\( \; I \; \)上で一様収束するとき、無限級数\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; f_{n}(x) \; \)は絶対かつ一様収束するという。

絶対かつ一様収束性の便利な判定法を補題として以下証明する。

補題e. 数列\( \; \{ a_{n} \}, \;\;\; a_{n} \geq 0 \; \)が\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; a_{n}<\infty \; \)を、さらに区間\( \; I  \; \)上で定義された連続関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)が\[ \forall x \in I, \;\;\; \forall n, \;\;\; |f_{n}(x)| \leq a_{n} \]

と満足するとすれば、無限級数\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; f_{n}(x) \; \)は\( \; I \; \)上で絶対かつ一様に収束する。

証明1。まず数列\( \; A_{N}=\sum_{n=1}^{N} \; a_{n}, \;\;\; N=1, \;2,\ldots \; \)は単調増大列でかつ有界であるから収束する。その極限を\( \; A=\sum_{n=1}^{\infty} \; a_{n} \; \)とおく。収束列はCauchy列であるから任意の正数\( \; \varepsilon \; \)に対してある\( \; N' \; \)があって、\( \; N>M \; \)に対して\[ M\geq N' \Longrightarrow |A_{N}-A_{M}|=\sum_{n=M+1}^{N} \; a_{n}<\varepsilon \]

となることに注意すると、数列\( \; F'_{N}(x)=\sum_{n=1}^{N} \; |f_{n}(x)|, \;\;\; N=1, \; 2,\ldots \; \)は任意に\( \; x \in I \; \)を固定するとき、\( \; M \geq N', \; N>M \; \)ならば\[ |F'_{N}(x)-F'_{M}(x)|= \sum_{n=M+1}^{N} \; |f_{n}(x)| \leq \sum_{n=M+1}^{N} \; a_{n} <\varepsilon. \]

よって\( \; \{ F'_{N}(x) \} \; \)はCauchy列だから、\( \; \mathbb{R} \; \)の完備性によって収束する。ところで\( \; x \in I \; \)は任意であったから証明が完了した。

証明2。数列\( \; \{ F'_{N} \} \; \)自身が単調増大列であることから、有界であることがわかれば収束することが示せる。任意に\( \; x \in I \; \)を固定すると、\[ F'_{N}=\sum_{n=1}^{N} \; |f_{n}(x)| \leq \sum_{n=1}^{N} \; a_{n}. \]

\( x, \; N \; \)は任意であるから、ここで\( \; N \to \infty \; \)の極限をとればよい。

補題f. 区間\( \; I \subset \mathbb{R} \; \)上で定義された連続関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)からつくられる無限級数\( \; \sum_{n=1}^{\infty} \; f_{n}(x) \; \)が\( \; I \; \)上で絶対かつ一様に収束するならば、この無限級数は一様に収束する。

証明。数列\( \; \{ F_{N} \} \; \)が\( \; \mathbb{R} \; \)のCauchy列であることは仮定から明らかだから、\( \; \mathbb{R} \; \)の完備性により直ちに示される。

最後に項別積分、項別微分に関する補題を紹介しておく。いままでの補題を使えば容易に示される。

補題g(項別積分).  連続関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)から得られる数列\( \; \{ F_{N} \} \; \)が有界閉区間\( \; I \; \)上で一様収束しているとすると、\[ \lim_{N \to \infty} \; \int_{I} \; F_{N}(x)dx=\int_{I} \; \lim_{N \to \infty} \; F_{N}(x), \]

すなわち\[ \sum_{n=1}^{\infty} \left ( \; \int_{I} \; f_{n}dx \right ) = \int_{I} \left ( \sum_{n=1}^{\infty} \; f_{n}(x) \right ) dx . \] 

補題h(項別微分). 有界閉区間\( \; I=[a, \; b] \; \)上で微分可能な関数列\( \; \{ f_{n} \} \; \)があるとする。いま\( \; f_{n}(x) \; \)の導関数\( \; df_{n}(x)/dx \; \)が任意の\( \; n \; \)に対して連続で、\( \; \{dF_{N}/dx \} \; \)が\( \; I \; \)上で\( \; G \; \)に一様収束し、さらに数列\( \; \{ F_{N} \} \; \)が\( \; I \; \)で各点収束するとする。このとき\( \; F\; \)は\( \; I \; \)で微分可能で\( \; dF(x)/dx=G(x) \; \)であり、\[ \lim_{N \to \infty} \; \dfrac{d}{dx}F_{N}(x)=\dfrac{d}{dx}\lim_{N \to \infty} \; F_{N}(x), \]

すなわち\[ \sum_{n=1}^{\infty} \; \left ( \dfrac{d}{dx} f_{n}(x) \right ) = \dfrac{d}{dx} \left ( \sum_{n=1}^{\infty} \; f_{n}(x) \right ). \]